サウダージ no Ueno

生協の企画で上野へ行く。


まず旧鴎外亭へ。
ホテル内にあるらしいが、全く外からは分からない。
中へ入ると、こじんまりとした日本家屋が1軒そのまんまホテルの中庭に立っていた。
庭付き平屋建てのこの家で、森鴎外舞姫を書き上げたそうだ。
箱庭の池に掛けられた橋に立って全景を眺めると、上からはらりと朱い葉が落ちて来た。
ゆらゆらと水の上に舞い降りる紅葉に、鯉があいさつをして行く。
いとをかし。
頂いたパンフレットを見ると、なんと宴会にも使えるらしい。
ということは中に入れるのか、と覗いてみる。
玄関の戸を開けると、ふわりと良い匂いが鼻をくすぐる。
奥は別の客がいたため入れなかった。
玄関で引き返し、次の目的地へ向かうことに。
何故おでんの匂いが玄関中に充満していたのか、と不思議に思いながら、鴎外亭を後にした。


次の目的地は国際こども図書館(旧国立国会図書館)。
格式ある外観。厳かに佇む姿は国立博物館にも負けないと思う。
中は3階建てで、1階がこども用に開放されている。
上階は18歳以上が閲覧できる資料室になっているのだが、何故制限するのか分からない。
資料室では児童書や教科書を閲覧できる。
私は昔読んだ絵本に再会し、とても楽しいひとときを過ごせた。
久しぶりに会った絵本は、当時読んだままの感情を鮮明に思い出させた。
読み返してみれば、全く違う感想を抱くと思っていたので、面食らったが嬉しくなった。
表紙は記憶の奥底にある映像を引っ張ってきたが、埃っぽいページはそれが過去のことであることを語っていた。
思いがけないノスタルジアに酔っていた私は、その絵本から離れられなくなりそうになった。
もし貸し出し可能であったなら、絵本にとり込まれていたかもしれない。
それは、絵本という姿を借りた、思い出という美しい名の誘惑だろう。
過去は様々な声で人に囁く。
時々聞きたくなるその声が、今日は絵本を通して甘く響いてくる。
チョコレートが溶けるように、記憶の中へ呑まれていく感覚。
目の前が波のように溢れて流され、私は我に返った。
図書館独特の淡い光が優しく、カーテンドレープの影を作っている。
今度は独りで会いに来ようと思った。


・・・何を書いているんだろう。
題名をサウダージにして思ったのだけど、最近私の頭の中でエンドレスに流れている曲がある。買おうかな。

サウダージ』『アゲハ蝶』そして『ジョバイロ』かしら。ラテン系のリズム、切なさと色っぽさに満ちている曲だと思う。ポルノの楽曲は歌詞もメロディーも完成度が非常に高い!と勝手に評価している。