歳を感じる年の瀬

朝の中央線、通勤するオジサマで満員の車内。
体は密着状態。温度は密林状態。
セーターとカイロで更に温められ、朦朧とする意識。
周りは疲れきった顔の中年オヤヂ。
見てる私が疲れる。
地獄だ。ツライ。

「高円寺、こうえんじー」
あと一駅、こんなに長いものなのか。
誰か・・・私を癒して!
私の声が天に聞こえたのか、ふと顔を上げると目の前に笑顔が。
あぁ!なんて神々しいの!!
涙が出そうな位、その表情は麗しく、そして全てを包み込むような優しさを持っていた。

「中野、なかのー」
鼻にかかった声で人々は一斉にドアの向こうへと動き出す。
流に呑まれながら我に返った私は、笑顔の持ち主に気づいた。
チョコレートを片手に眩しい程の白い歯を見せる彼は、隣国の王子様だった。

「そうか、ペさまってこんなに素敵だったんだ・・・
ありがとう、ヨン様・・・あなたをバカにして悪かったわ・・・
バカね、私って天邪鬼なのだから・・・」
マダムの気持ちが分かった気がした。


帰り道。オダギリジョーのポスターを見て
「持って帰りたい・・・」と呟く、マダム予備軍の私。
ヨン様よりも一(はじめ)様なのだ。
若いってことで。