庶民派犯罪計画(母と娘の不毛な会話シリーズ4)

我が家族は実家から東京へ遊びに来る際、飛行機を使う。電車で来ると8時間ほどかかる上、父の出張の賜物であるマイルを利用すれば無料になるからだ。母が実家へ帰る時のこと、私は羽田まで見送りに行った。母はプリンを片手に、私に手を振って手荷物検査場へ消えていく。今生の別れではないが、後姿が消えてしまうまで、私はいつも立ち去らないことにしている。

手荷物検査はテロ以来本当に厳しくなった。私は未開封の清涼飲料水を機械に通すよう言われたことがある。「開けてないんだよ?!あんたたちA●●はそんなにサン●●●が信用できないっての!?」とぶつぶつ言いながら指示に従った。隣の人は黄色い液体のペットボトルを没収され、検査官に抗議をしていた。何が入っていたのだろう。羽田のとんかつ屋で母にこのことを話した。
「お茶よりジュースのほうが爆発しそうだよねっ。」思いついたまま言う私。
「・・・ニトログリセリンって黄色いのかしら?」と母。
「やだなぁ。知らないよ。他の液体かもしれないしさ。ま、ペットボトルでハイジャックなんかできないよね。」
「そうねぇ、あらゆる事態を想定しているんじゃないかしら。」
「このレモン、隠して飛行機乗ってみて。」とんかつに付いていたレモンを見て閃いた。
「それくらいはできそうだけど・・・なんでよ?」
「目潰し。これでハイジャックするの。」
「あぁ!なるほど!!できるかもしれないわね。」
「これひっかからないよ。たぶん。持ち込み禁止にしないんだね。」
「柑橘系を全部ダメにするのは無理だからじゃないの。」
「でも、ファーストクラスでとんかつが出たら、レモンどうすんの?」
ポーションタイプなのよ!」
「おぉ!・・・いや、でもさ、香水の容器に移し替えればいいじゃん。」
「持ち込めないのよ。あらゆるスプレーは取られちゃうの。」
「え?空のプラスチック容器でも?霧吹きとかさ。」
「ダメなのよ。」
「・・・もしかして、この間引っかかった?」
「あら。見てたの?」
「かばんの中ひっかき回してたよね。スプレー?」
「そうなの。しかもトイレの消臭スプレーよ!手のひらサイズなのに!!」
「・・・はぁ」
「エチケットよね。」
「・・・」
この後、何度か飛行機に乗ったが、レモン持込は一度も試していない。小心者の私には無理だ。

それより、ファーストクラスでとんかつが出ることあるのだろうか。ポーションタイプなのか?それともスチュワーデスさんがかけてくれるのか?メイド喫茶じゃあるまいし。誰か教えてください。