変わった一家の変わった犬(母と娘の不毛な会話3)

前にも書いたが、実家にはミニチュアシュナウザーが暮らしている。彼は2つになる。まだまだ若い。好奇心旺盛、食欲旺盛。私は彼に会えるのが年に数回しかないので、彼のことは母から聞いた情報が主だ。

「聞いて!シオンがね・・・」シオンとは犬の名前だ。彼のいたずらに困っている、と母はいつも愚痴を言っているが、とても嬉しそうだ。娘としても喜ばしいことである。
「また何かやったの?」話によると、母はシオンを連れて鍋の材料を買いに行ったそうだ。豆腐、春菊、くずきり、鶏肉、納豆など食材を買い込み、シオンが待つ車に積んだ。帰ろうという時、買い忘れに気づいた母は、シオンに直ぐ戻ってくると言ってスーパーに急いで引き返した。
「分かった!車に置いた食料、全部食べられちゃったんでしょ」
「違うわよ。あの子ったら、春菊一束食べちゃったのよ!」
「え?春菊だけ??」
「そうよ。お肉あったのにねぇ。おかしな子ね」
「・・・他は全く手をつけなかったの?」
「春菊だけよ。まったく!高かったのに。勘弁してほしいわ」
うちの犬はベジタリアンだった。野生の血はどこに行ってしまったのだろうか。しかしお腹を壊さなかったのだから、良かったのだろう。春菊なしの鍋でもいいじゃないか。
「オヤジに言ったのよ。春菊食べちゃったこと。そしたら何て言ったと思う?」帰宅した父はシオンを抱き上げ、
「そうかぁ。うまかったか?」と笑ったらしい。
母は入院中の祖母(母の母)にも春菊事件を話した。すると祖母は
「あらまぁ。それはおいしかっただろうねぇ」と笑ったそうだ。

今うちの犬のお気に入りおやつは納豆だ。フリーズドライの国産大豆を使った高級品。友人に変わり者だと言わしめる私。家族も変わっているのかもしれない。でも、それを誇りに思っている。変っている方が退屈しないしね。